◎中東戦争でも上がらない原油
昨年末からイスラエルとパレスチナの戦争がつづいています。
しかし、一応触れておきます。
昨年は、いわゆる一般の専門家さんも、「アメリカの衰退」「アメリカの没落」という言葉を使うようになりました。
アメリカの衰退を恐れている国々は、けっこうたくさんあります。
同国に安全を保障してもらっているわが国もそう。
しかし、もっとも恐れているのはイスラエルでしょう。
なんといっても、回りは全部イスラム教の国々で、イスラエルを国家として認めていないのです。
今までは、「アメリカがイスラエルの後ろにいる」ということで、容易に手出しできなかった。
もしアメリカが衰退し、「もうイスラエル問題にはかかわりません」と宣言したらどうなるでしょうか?
当然、イスラエルは消滅することになるでしょう。
イスラエルは今何を狙っているのか?
周りをイスラムの国々に囲まれているとはいえ、急進的な敵はそんなに多くありません。
イラン・シリア・レバノン(のヒズボラ)・パレスチナ(のハマス)です。
イスラエルは、アメリカが健在なうちに、これらの勢力を一掃しておきたい。
そのためには、アメリカを戦争にひきづりこまなければならない。
オバマさんみたいに、「イランと対話する」なんて気楽なことをいわれると困ってしまうのです。
一方のアメリカはどうでしょうか?
アメリカにも実は、イランを大々的に空爆したい理由があります。
イランは、フセインのイラクと同じく、ドル体制に打撃を与えている。
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<イラン、原油のドル建て決済を中止=通信社07年12月10日9時31分配信 ロイター [テヘラン 8日 ロイター] イラン学生通信(ISNA)は8日、ノザリ石油相の話として、同国が原油のドル建て決済を完全に中止した、と伝えた。ISNAはノザリ石油相からの直接の引用を掲載していない。ある石油関連の当局者は先月、イランの原油の代金決済の「ほぼすべて」はドル以外の通貨で行われていると語っていた。>
さらに問題なのは、イランを見逃すと、他の産油国が反逆する可能性が高まる。
<GCC首脳会議声明、2010年の通貨統合目標維持へ=事務局長07年12月4日18時29分配信 ロイター[ドーハ 4日 ロイター] 湾岸協力会議(GCC)首脳会議の声明では、2010年までに通貨統合を達成することへのコミットメントが維持される見通し。アドルラハマン・ビン・ハマド・アティーヤ事務局長が4日明らかにした。同事務局長は、声明の最終案には2010年の目標時期が盛り込まれているか、とのロイターの質問に対し「そうだ」と答えた。>
また、戦争はいい公共事業になります。
アメリカは世界恐慌を第2次世界大戦で克服した。
90年代初めの危機を湾岸戦争で乗り切った。
ITバブル崩壊後の危機を、アフガン・イラク戦争でのりきった。
イランを大々的に空爆するのは、いい公共事業になる。
地上戦を行わなければ犠牲者も出ないので、国内世論はなんとかなるでしょう。
目標は、「イランに原油の決済通貨をユーロ・円からドルに戻させること」となるでしょう。
問題は「開戦理由がない」ということ。
アメリカはイラク戦争時のウソがばれ、戦争するのが非常に難しい状況です。
<ブッシュ大統領:イラク戦争誤情報が「最大の痛恨事」【ワシントン草野和彦】「最大の痛恨事は、イラクに関する情報の誤りだった」。ブッシュ米大統領は1日放映の米ABCテレビの番組で、大統領としての8年間を振り返った。03年3月のイラク開戦に踏み切る理由となった大量破壊兵器が存在しなかったことを悔やんだ。>
(毎日新聞 2008年12月3日)
ですから、日本を追い込んで先制攻撃させたように、「仕方なく戦争をはじめる口実」が必要。
「イスラエルがハマス・ヒズボラ・シリア・イランと戦争している。救済しなければ!」
といえば、ユダヤ系のメディアはオバマの戦争に反対しないでしょう。
イスラエルはアメリカをひきづりこむために、戦争をしているのです。
まとめます。
1、「ドル体制」を攻撃している中心国はロシア、そしてイランである。
2、イラク攻撃時のウソがばれたアメリカは、イラン攻撃の口実をみつけるのが難しい。
そこで「イスラエル防衛」を口実にする可能性が高い。
(ユダヤ系のマスコミが、「国民洗脳工作」を担当してくれるだろう。
3、ロシアを弱体化させるために、アメリカは原油価格を安くおさえ
る必要がある。
というわけで、今年の焦点も基本的に中東(特にイラン)、そしてロシア(これに絡んでグルジア・ウクライナ)ということになりそうです。
さらに、インド・パキスタン、韓半島などでも動きがあるかもしれません。(おわり)