◎原油価格はコントロールできるか?
「とはいえ、原油価格を人工的にコントロールできるんですか?」こういう疑問が出てくるでしょう。
原油価格は長期的に上がっていく方向です。
その理由は、
1、世界人口が年間8000万人ずつ増えているので、需要は増加する
2、原油は枯渇する方向なので、供給は減る
3、世界経済が拡大すれば、需要は増える(特に中印の需要)
4、新エネルギーへの転換がなかなか進んでいない
等々。
中短期的に見ると、二つの異なる動きがあり、予測は難しいです。
1、世界経済危機で需要が減少→下げ圧力
2、中東戦争→上げ圧力
とはいえ、需給関係を凌駕する要因もあります。
それが投資(あるいは投機)マネーの動き。
原油価格は、07年1月時点で60ドルでしたが、08年7月には147ドルを突破。
1年半で倍以上になりました。
その後急落し、なんと30ドル台まで下がってしまいました。
1年半で需要が倍増するはずはなく、数か月で需要が3分の1になるはずもありません。
08年の原油暴騰を引き起こしたのが投機資金でした。
世界の投資資金は90年代の半ばから2000年まで、ITバブルにわくアメリカ株式市場に流入していた。
そのため、NYダウは95年の3900ドルから00年初までに3倍化。
2000年にITバブルがはじけると、今度は資金が住宅市場に流れ込み、バブルを形成します。
住宅バブルがはじけると、行き場を失った投資資金は商品市場に流れ込み、石油や穀物価格を暴騰させたのです。
この点、日本の「エネルギー白書」も指摘しています。
<<エネルギー白書>原油高騰は投機資金が相場押し上げ08年5月27日10時48分配信 毎日新聞政府は27日の閣議で07年度のエネルギー白書を決定した。原油価格の高騰について、原油先物市場に流入する投機資金が相場を押し上げていると指摘。>
なぜ投資資金が流入すると、原油価格は異常な値上がりを見せるのでしょうか?
世界の株式市場規模は6500兆円、債権市場は5700兆円。
これに対し、世界の原油価格決定にもっとも大きな影響を与えるNY原油先物市場は、わずか15兆円。
市場規模が小さすぎるため、資金が流入すると暴騰してしまうのです。(つまりコントロールしやすい)
アメリカでは昨年、5つの大手投資銀行が実質破綻しました。
普通の大手銀行も国からの支援なしには立ちいかない状況になっている。
つまり、政府が資金の流れを都合にあわせてコントロールできる状況が生まれているのです。